論文メモ:(Starr TN et al., Nature, 2017) Alternative evolutionary histories in the sequence space of an ancient protein

研究や実験が上手な方々というのは、その時代のテクノロジーで攻めることが可能な問題設定をするのが、上手だとよくきく。そういう雰囲気がよく伝わる論文を見つけたので、メモ。

Last Authorの先生は、ステロイドホルモン受容体の進化について、研究を続けている先生で、過去にステロイドホルモン受容体を無脊椎動物で発見し、ステロイドホルモン受容体の共通祖先の配列を決定された方 (Person H, Nature, 2012)。

これまでの研究で、ステロイドホルモン受容体がどのように進化してきたのかを、明らかにしてきたが、現存する生物を通じて、共通祖先からどのように受容体が進化してきたのかを調べるだけでは、どうして生物が今のような進化を遂げたのか?、ということの一断面しか見れていないと考えていた。

この問題意識をもう少し具体化すると、「理論的に可能なアミノ酸配列のうち、どうして特定の配列が選ばれてきたのか?」ということになる。しかしこれではまだ、実験で検証する疑問としては具体化が不十分で、著者たちはステロイドホルモン受容体の進化を例に、もう少し掘り下げて、「ステロイドホルモン受容体における共通祖先(AncSRs)のDNA認識配列から、理論的に可能な20の4乗通りのダンパクのうち、実際に私たちの歴史で選ばれてきたタンパク質 (Historical outcome)と、そうではなかったタンパク質を比較した場合、どのようなことがいえるだろうか?」ということを考えた。

(補足) ステロイドホルモン受容体には、現在複数のものがあるが、それぞれ特定のホルモンで活性化することに加えて、特定のDNA応答配列に結合することが知られている。著者たちは、ステロイドホルモン受容体の共通祖先AncSR1とAncSR2と名付けた二つのタンパクのDNA応答配列の特異性の違いに目をつけて実験を進めた。

この実験を行うために、著者らは、Deep mutational scanningと呼ばれる技術を使っている (Fowler DM et al., Nat protocol, 2014)。これは、目的の部位に変異を持つタンパク質のライブラリーを作成し、任意の系でセレクションや選抜後、プラスミドを次世代シーケンサーで網羅的に解析することで、自然界には存在しない変異も含めて、タンパク質の安定性や、リガンドとの結合能力、etc…をもった変異体を選抜するという技術だ。

著者らは、この技術で、ステロイドホルモン受容体の共通祖先AncSRsのDNA認識配列に変異を加えた20の4乗通りの変異体を加え、それらがどれくらい特異性を持って各DNA配列に結合するかをFACS-seqによって測定し、steroid配列に特異的に結合する変異体を選抜し、mutational landscapeを作成し、解析した。

また、ステロイドホルモン受容体の進化過程で、リガンドの特異性とは関係ないところで、変異が入っている部分があるそうだ。この部分の変異を利用して、進化に果たす役割を検討した。

解析のところは、真似したくなる解析が色々入っていて、非常に勉強になったが、
結論としては、
(1) Historical outcomeとして何が選ばれるかは、前の世代の配列に依存するということ
(2)「 DNA配列への結合の特異性を決定するのには、直接関係ない部分の変異」が、DNA配列への結合の特異性の、可能な進化の範囲を拡張させる。
ということを、mutational landscapeの解析から、考察している。

使えるテクノロジーの範囲内で、「進化」という現象を考察するため、よく考えられている研究だなと感じた(どこでも誰でも使えるテクノロジーだとは言わないが) 。

参考文献
Starr TN et al., Nature, 2017
https://www.nature.com/articles/nature23902

Person H, Nature (news), 2012
https://www.nature.com/news/prehistoric-proteins-raising-the-dead-1.10261

Fowler DM et al., Nat protocol, 2014
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25167058

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